へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜






 戦闘体勢に入った魔獣達の瞳には、闘志しか宿っていない。


 ――あれが、本来の魔獣の姿なんだ……。


 今までなら恐怖を抱いていたはずなのに、不覚にもその姿を美しいと思ってしまった。

 上空から攻め入っていた部隊のグリフォンが、森を覆う霧を切り裂くように風を巻き起こすと、瞬く間に陽の光が森へと注がれる。ようやく、敵がリヒトだけではないと判断したゴブリン達だったが、逃げ場は何処にもない。

 一体、また一体と倒していくうちに、魔獣達は戦い方を学び、更に賢くなっては本能を呼び起こす。鋭い爪を牙を武器にして、敵を屠る姿は神々しい。



「はぁあッ!」



 己の体一つで囮役を自ら名乗り出たリヒトは、ユネスに背中を預けるようにしながら次々と敵を薙ぎ払っていく。騎士団長でもある彼だったが、その身を獣人化させ魔獣達と互角に戦っている。

 果敢に歯向かうゴブリンだが、絶対的な力の差で瞬く間に地面に伏せていく。



「すごい……」



 囮役のリヒトを援護し、見事な連携を取る騎士達は負けじと攻撃を繰り返す。


 訓練の時と同様、軽い身のこなしで戦う彼らは、どこか楽しそうだ。

 最後の一匹を切り捨て、完全に霧が晴れた頃には、刺激臭はどこにもなく見事に勝利を収めた騎士達と魔獣達の姿がそこにあった。