「ミア」
「はっ、はい!」
「敵を見つけ次第、お前は安全が確保できる場所で待機しろ」
「了解しました」
フェンリルに目配せすると、意外にもリヒトの意見に賛同しているのか、大人しく目を伏せた。
「行くぞ」
先頭を切って突き進んでいくリヒトに続いて、騎士達も魔獣達と共に森の奥へと進んでいく。
あまりにも不気味な森に身震いしていると、遅れを取らまいとフェンリルがピッタリと部隊に着いていく走る速さに、振り落とされそうになる。
体勢を整えつつ、森の奥へと突き進んでいくと、刺激臭が鼻を突き刺してくる。
その臭いの根源を辿っていくと、霧の中で影が揺れ動くのをリヒトは見逃さなかった。全体に止まれというように片手を上げる。
「前方に敵を確認。お前ら……後は好きに暴れろよ」
どこか楽しげに笑ったリヒトは真正面から敵に斬りかかって行き、剣を閃かせた。リヒトに注意が注がれ、濃い霧の中で待機している他の騎士には気づくこともない。
森の奥の方からぴゅいっ、と、鳥の鳴き声のような指笛が聞こえてくる。背後から攻め入る隊員達の準備が整ったようだ。
突撃していく彼らの背に守られるようにして、ミアは安全が確保できる岩陰へと身を潜めた。



