いつも通りの変わらぬ朝を迎え、魔獣達の世話が一通り終わったミアは、フェンリルの檻の前で仁王立ちしていた。

 そんな彼女に全く反応しないフェンリルは、大きな欠伸をして、背を向けるように体勢を変えた。



「ねえ。昨日みたいにちょっとお喋りしない?私、あなたのことを、もっと色々知りたいの」


『……』


「ねえってばあー……」



 昨日の出来事を語れる相手は、目の前にいるフェンリルしかいないというのに、向こうにはその気はないらしい。

 親子コカトリスの騒動に一人で首を突っ込んだ件に加え、街での多数のフェンリルを目撃情報とくれば、当然リヒトからの長い説教を受ける羽目になった。

 魔獣騎士の相棒にもなっていない、全く人馴れしていない魔獣を外に出したのだ。怒られるのも無理はない。

 街の民を守る魔獣騎士団が、民を傷つけていたかもしれないと言うリヒトの気持ちも良く分かるのだが、その言葉には少し胸が傷んだ。



「私を守ってくれたあなたが、街の人を襲うなんてことありえないのに……。こんなにも賢い子なのに。ね?あなたもそう思わない?」



 自分が来る前の魔物達の様子は分からないが、少なからず現状はとにかく穏やかで、危険行動を取ったことはない魔獣達に、ミアはこの子達はいい子だと胸を張って言えるつもりだ。