晴れ渡った空の下、魔獣達の世話で使ったタオルを洗い終わったミアは、洗濯に取り掛かっていた。

 雲一つない青空に舞い上がるように風に靡かれる、真っ白なタオルを干しているだけで清々しい気持ちに包まれる。無意識に鼻歌を歌えば、檻の中で寛ぐ魔獣達もどこか嬉しそうに目を細めていた。


 こんなに穏やかに仕事が出来るなんて、配属初日の不安が嘘みたい。


 配属されてから一週間以上も経てば、それなりにやることの時間管理はある程度できるようになってきて、魔獣達の世話にも余裕が出来てきた。

 相変わらずフェンリルがミアに懐く様子はないが、心を開いてもらえる努力は惜しまない。きっと心を開いて、召喚された意味を己で掴み取ってくれる、そう信じて。

 ただその努力の中にミアの若干の下心も含まれているのを、賢いフェンリルは知っていた。

 モフモフを手に入れようとするミアの熱い眼差しは、痛い程フェンリルに突き刺さっているのだから。



「さてと。新しい藁を手配しなくっちゃ」



 獣舎の隣の小屋に敷き詰めてある藁をピッチフォークでかき集めていると、何やら騎士達の慌てた足音が聞こえてくる。

 訓練にしてはどこか様子が違う音に思わず、手の動きを止めて耳を澄ます。何か分からないが、緊張感を感じたミアはピッチフォークを元の位置に戻す。

 何事かと小屋から出て見ると、ユネスが指揮を取りながら、部下の騎士達と共に馬に跨ぐ姿が見えた。