ただ魔獣を召喚出来るのも限られた者しか出来ない。その召喚の能力に長けた者……それが召喚士だ。
 
 生まれ持った才能や魔力、素質のある人間にしか召喚術は使えず、その力で数々の神の加護を持つ者達を召喚し、時には生活を、時には国を潤わせる行く先々で重宝される存在。

 そんなどの働き先でも長く大切に扱われるはずの召喚士だが、ミアにはその未来は到底見えない。

 ……何故なら、ミアが配属される場所に問題があるからだ。



「第四部隊、か……数ヶ月もの間で数少ない召喚士がしょっちゅう入れ替わるとかいう、召喚士殺しの異名を持つこの場所で、果たして私の寿命はどれぐらいなんだろう」



 噂には聞いていたその部隊に、まさか自分が働く事になるとは思ってもいなかった。

 王国本部魔獣騎士団には六つの部隊があり、国の各地で任務を遂行している。

 部隊には平均して五人以上もの召喚士がいるのが当たり前だが、第四部隊だけは何故か一人いるかいないか。

 王都のすぐ東にあるこの街に拠点がある第四部隊には、王都を守る責務があるはずだが、召喚士が不在な期間があるとなると、王都が危険に晒されることになる。

 それでもなんとかやって来ているということは、腕の立つ騎士達がいる証にはなるが……。


 つまり召喚士がいない時は、魔族相手に腕任せでやってるってこと?人の力だけで、ねじ伏せてるの?


 もしかしたら人とは思えない恐ろしい力を持つ人達の中で、血の涙を流しながらも仕事をしなければならない、そう思うと勝手に身体が震えた。


 でもようやく見つけた私の職場だ。逃げたりはしない。


 今にも踵を返して家に帰りたくなる気持ちを押し殺して、ミアは自分を鼓舞しながら見えてきた厳重な石門に向かって大きく歩き出す。