最後の一匹のブラッシングを終えたミアは、同じ体勢をしていたせいで凝り固まった身体を解すように伸びをしながら、彼の元へと向かう。



「どう?少しは慣れた?」


「まだまだ手探り状態って感じかな」


「ここまで懐かれておいてよく言うよ」



 苦笑混じりにシュエルは笑うが、ミアは至って真剣だ。

 ミアの求める世話の質には、もふもふ達の更なるもふもふを掲げているため、そう簡単にはいかないのだ。



「最初はやれる範囲でいいんだからね?」


「でも、やれる事をこの子達にやってあげたいの。もしかしたら騎士の皆に心を許して、いい相棒になってくれるかもだし」


「本当にミアはすごいなあ……」


「そう思うんなら、シュエル。お前もちゃんと鍛錬に身を入れろよー!」


「ミアさーん!その魔獣達がいつか心開いたら、俺にも散歩させてくれよな!」


「本当に世話してくれてありがとう!すっげぇ、助かってる!」



 シュエルを連れ戻しに来た騎士達が、ミアを励ますように声を掛けては魔獣達の様子を伺う。気さくな彼らはミアを大歓迎してくれ、時折りこうしてミアの様子を見に来てくれている。

 まだ獣人である騎士達に警戒心むき出しの魔獣達は、彼らに怯え檻の隅に隠れた。

 大丈夫だよと声を掛けると、少しだけ不安が安らいだように目を伏せる魔獣達に息をついた。


 まだ世話し始めたばかりだもんね。ゆっくり時間を掛けて、彼らにも慣れて貰わないと。


 意気込むミアの慣れない生活は、一日、二日と目まぐるしく過ぎていった。