学校在学中に低学年でも簡単に召喚できるはずの、妖精《フェアリー》すら追試の再追試でやっと召喚出来たミアには、中々に難易度の高い課題だ。

 魔獣を召喚しろとリヒトに言われて、彼を召喚せずに場違いの何かを召喚していたら、即座にクビになっていただろう。

 彼を召喚したお陰で、しばらくの間は召喚術を禁じられている。ミアにとってはそれはそれで好都合だったが……悔しい気持ちは拭えない。



「クルル?」


「大丈夫。きっとあなたにもここの騎士達の中でもいい相棒がいるはずよ」



 柔らかい羽毛のグリフォンの首元を撫でながら、再び気合いを入れて次々と散歩をこなした。

 全ての魔獣の散歩が終わった頃には日は傾き、魔獣達が運動後の休憩をしている間に急いで夕ご飯の準備を整え、日が沈んだ頃には寝る前のブラッシングを行う。

 こうして一日の業務を終わった頃には、満足感に比例するように疲労感がどっと押し寄せてきた。

 自室に戻ってからの記憶は全くなく、気がつけば朝日がまた上っていた。

 自分の容姿に気を使う暇すらなく、最低限の支度を整えて獣舎へと急いで向かう。疲れは抜けきっていないはずなのに、魔獣達を前にすればそんな疲れはどこかへ消し飛んで、顔が緩んだ。

 今まで感じたことの無い深い愛情を注がれる魔獣達も、ミアにとことん懐くのも無理もない。

 手際良く世話をしていると、獣舎入口近くの丸窓から人懐っこい顔が様子を伺うように中を見つめていた。



「俺の方が世話してた時間長いって言うのに、すごいねミア」



 訓練の合間に顔を覗かせたシュエルが、魔獣達の懐きっぷりに感服する。