濡れたタオルで身体を拭きあげると、甘えたような声を出す魔獣達に、朝から幸せを噛み締めていた。



「ほんっとに可愛い……」



 顔が三つあるケルベロスに、鷲の顔に獅子の身体を持つグリフォン。

 雷を纏うサンダーバード、召喚するのが難しいケルピーまで、揃いも揃っている。

 扱うのが難しく恐ろしい生き物だと授業では散々言われてきて、恐怖を植え付けられていた。

 だが、実際の所こんなにも愛くるしさを振りまく魔獣に対して、そんな感情はこれっぽっちもなかった。

 一つ一つの檻に滞在する時間が思わず長くなってしまって、気がつけば太陽は真上に上っていた。

 誠心誠意を込めたブラッシングをして、順番に獣舎周囲で手網を握りしめながら散歩をするミアに、なんだなんだと騎士達が遠巻きに集まってくる。



「あの言う事一つ聞かなかった魔獣達を意図も簡単に……」


「すげえなぁ」


「やっとこれで相棒の魔獣を召喚してくれる召喚士が見つかった、って感じだな」


「あれだけ魔獣を手懐けられるんだ。とびきり強い魔獣を召喚してもらいたいもんだな!」



 聞こえてくる声に聞こえないフリをするが、騎士達の言葉が重たく伸し掛るのが分かった。



 これは……世話係の仕事以外にも特訓しておかなきゃ、ここから追い出されそうね。