「こんな可愛い顔して果敢に戦うんだから、すごいわよね。にしても、このもふもふ……癖になりそう!」
 

 ミアが額を撫でる度に垂れた耳を揺らし、檻に何度も身体を擦り付けては彼女に撫でるのをお代わりとでも言っているかのように甘えている。

 見たこともない光景に唖然としているシュエルを他所に、他の檻の中にいる魔獣達も次々と瞳を輝かせてミアを求めていた。



「う、嘘だろ……?」


「何がどうなってるんだ?」


「あの召喚士、一体何者なんだよ……」


「今日配属された召喚士じゃないか?」



 訓練を終えた騎士達が、いつもと様子が違う獣舎を覗き込んでは、シュエルと同じように口をあんぐりと開けて目の当たりにした光景に、顔を硬直させる。

 お構い無しにミアは檻に入った魔獣達に一通り挨拶をするように、身体を撫でては味わったことの無い毛並みの感覚に頬を緩ませた。


 こんな子達と一緒にお仕事出来るなんて……!私、もしかしたらついてるのかも?!


 幼い頃から動物と戯れることが好きで堪らなかったミアにとっては、この獣舎が天国のように思えた。


 魔獣という未知の生き物に対しての恐怖心や、召喚士殺しの異名を持つこの職場に怖気付いていたが、今のミアの心は燃えていた。

 ――傷ついた心を癒して、とびきりのもふもふに仕上げてあげようと。


「皆、これからよろしくね!」


 気合い十分なミアの挨拶に、檻の中にいる魔獣達が一斉に喜びを露わにした。