青々とした芝生の上を歩きながら、飾り気は一切ない石壁に囲まれた敷地内を見渡していると、横から顔を覗かれた。



「あ、遅れたけど俺はシュエル・クラシアって言います。まだ騎士見習いの身なんで、シュエルって普通に呼んでください」


「私は召喚士のミア・スカーレット。私のこともミアで大丈夫だし、畏まらなくて大丈夫だよ。よろしくね、シュエルくん」


「それは有難い。俺、そういう堅苦しいの苦手で」



 照れくさそうに笑いながら頭を掻くシュエルは人懐っこい笑顔を浮かべる姿は、尻尾を力強く振る犬のように思えた。

 首に巻かれた紺色のスカーフにあしらわれた、彼の髪色に似たサンストーンがキラリと輝いては、その笑顔を照らす。



「獣人の事を他人にバレたのは初めてで、少し動揺してたんだけど、ミアがいい人で良かった」


「その獣人については、まだ頭が追いついていないんだけどね……」


「まあ無理もないよ。配属初日で爆弾のようなものを、投げられたみたいなもんだし」




 サラッと言うシュエルに、君もその爆弾を投げた一人でもあるんだよ?と心の中で呟いた。

 何がともあれ、気軽に話すことができる人が出来たのだ。ミアにとっては有難い存在に、そんなことは言えない。


「そういえばシュエルくんも、月の魔力の影響で獣人になっちゃったの?」


 ユネスに説明されたことを復習するように、問いかけるとシュエルは苦笑いを浮かべた。