王都スリアンゼルクの朝は活気で溢れ、貿易が盛んなこのベイリムの街は多くの人で賑わっている。

 行き交う人の顔には笑顔の花が咲いているのにも関わらず、ミアの表情は固い。

 田舎生まれ田舎育ちの本来のミアだったら、憧れを抱いていた都会のこの景色に胸を弾ませていたかもしれないが、そんな余裕は今の彼女にはない。

 春の暖かい日差しを眩く反射させる肩まで伸ばされたハニーブラウンの髪を靡かせながら、金刺繍が施された真新しい紺色の制服に着せられて歩く背中は今にも泣きそうだ。

 人にぶつからないようにしながら、何度も何度も読み返しても変わらない文面の文字を見つめて、書いてある文章に肩を落とす。



 『ミア・スカーレット殿
 王国軍魔獣騎士団、第四部隊所属とする』



 ……ようやく掴んだ就職先が、まさかここになるなんて。



 落胆しながらくしゃりと音を立てる封筒を懐にしまいながら、徐々に近づいてくる巨大な門を前に立ちくらみがしそうになるのをぐっと堪えた。

 ペリドットのような瞳に映り込む世界は、あまりにも大きすぎて後先が不安になるばかり。