あの一件が無ければ、不死鳥を呼ぶ為の羽根は手元になかったのだ。先の戦いの一手は、過去の自分があってこそ。

 首を突っ込んだことは全力で頭を下げるつもりではいるが、過去の出来事に後悔は微塵もない。



「俺を支えろと確かに言った。ただ、その言葉はこうして現場で身体を張れという意味じゃない」



 全てを制されるようなそんな感覚に、ミアは身体に力を入れて、真っ直ぐにリヒトを見つめ直した。

 自分がとった今回の行動がリヒトの言葉にそぐわないとしても、この気持ちだけは伝えたかった。



「私、団長の役に立ちたくて……!」


「知っている。ミアがどれだけ俺の為に動いているかなんて、好いている女を目で追っていれば、いとも簡単に分かる」


「……え?」


 ゆっくりと撫でて確かめる手が髪を、頬を、首を撫でる。感覚を嗜むように、彼の手は何度もミアを撫でた。



「俺はミアが傍に居てくれるだけで、不思議と強くなれるんだ。逆にミアを失えば、俺はきっと弱くなるだろう。俺にとってミアは、無くてはならない存在なんだ。もう無茶はしないと約束しろ」


「だって私なんかへっぽこだし、団長のこと召喚しちゃうし、まだまだ召喚士としての腕も浅いし……!現場の経験積まないと、団長の、皆の足を引っ張っちゃいますからっ」


「それでもだ。現場に出たいというのなら、俺を納得させられるようになったらだ」


「うぅ……」




 獲物を捕らえた獣は、もう逃がさないとでもいうようにミアの腰を強く抱き寄せた。