ただいつもの機嫌の悪さとは何かが違うと、首を傾げる。
 


「……ミアが居なかったら、俺達はあのバハムートをただ始末することだけに拘っていた。ただ平和的解決をもたらしたのは、紛れもなくミアのお陰だ。礼を言う」



 ぶっきらぼうに呟くと、くしゃりと苛立ちを含めて前髪を掻き分けた。

 褒められて嬉しいはずなのに、まだリヒトの本当に言いたい事を見抜けないミアは、切り株から立ち上がり彼を見つめた。



「まだ、何か怒ってます……よね?」


「……はあ。守りたいものが自ら危険に首を突っ込んでいく、こっちの気持ちを考えてもいないだろ」


「え?」


「怪我をしてないか、隅から隅まで確認させろ」


「えっ、えっ?!」



 突然腕を取られたかと思えば、吸い込まれるアイオライトの瞳を前に身動きは取れなくなった。



「まだミアが入隊したての頃も、自ら突っ込んで行ってコカトリスを自分の力だけで帰したこともあったな」



 囁く声は優しく、でも何処か鋭い。

 少しでも油断したら一気に喰われる、そう本能が訴えかけてくる。

 過去の危なっかしい記憶を持って来られて、怯みそうになるのを何とか耐える。