自分よりも遥かに大きな岩に押しつぶされて、ぺしゃんこという可愛らしいもので済まされる訳がない。

 皆のように訓練を積み重ねてきている訳では無いミアには、足は咄嗟に動かない。動こうとした時には、もう間に合う距離ではない。

 今更ながら、召喚術以外にも騎士達と同じように訓練をしておけば良かったと後悔が滲む。



 っ……!まだ私は皆の役に立ててないのに!!



 召喚術を発動させて魔獣を呼ぶにも、時間がない。間に合わないと分かっていても、逃げるの一択しかできないミアは、身を翻そうと動き出す。

 本日二度目の影が落ちてきて辺りが暗くなるのに、衝撃と痛みを覚悟した。



「怪我はない?」



 パラパラと細かい砂埃が落ちてきて、人懐っこい声に振り返ると召喚したペガサスに跨る白馬の王子――ではなく、ユネスがいた。

 土埃に軽く咳き込んで、目を丸くすると良かったとユネスは小さく微笑んだ。

 爽やかな顔でサラリと無事を確かめた彼は、大岩を粉々にした上に、その破片すらも風魔法で宙で纏めている。



「ユ、ユネスさん?!」


「リヒトが突っ走って行くから何事かと思ったけど、ミアちゃんがいるなら無理もないか」


「ユネスさん!団長の援護を!」


「勿論、そのつもりだよ。加勢は僕だけじゃないからさ――」



 風を切る音と共に、頼もしい鳴き声を響かせるその姿が見えた。