見事な二人の連携に気を取られそうになりつつ、バハムートの背後へと上手く回ったミアは神獣の力が宿る岩の裏へと辿り着く。

 苔むした岩肌に触れて、呼吸を整える。

 巻き起こる風に目を細めながらも、ミアは普段通りに魔法陣を描く。



 お願い……どうか私の声に応えて。



 全身を駆け巡る魔力に願いを込めて、細く長く呼吸を続ける。

 描き終わった魔法陣が眩い光を放つ。今まで描いてきた魔法陣とは比べ物にならない程に、そこに宿る魔力は大きい。

 内なる力が湧き出てくる感覚に召喚術を発動させるが、耳が痛くなるようなバハムートの咆哮に若干術が歪む。


「くっ……!」


 痛みに耐えながら、それでも集中力を欠けぬよう、目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。歪みは修正されるものの、させるものかとバハムートは大地を揺らす。


「ミアッ!!」


 リヒトに呼ばれ、ハッと目を開ければ、ゴゴゴ……と低い地響きと共に轟音が真上から迫っていた。

 見上げる先には、崖の上から転がり落ちてくる岩が勢いを止めることなく向かってくる。