へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜





「ちょ、ちょっと!なんで私が団長の事好きなこと知ってるの?!」


『ミア以上に分かりやすい奴がいるか。まったく……自分の口でちゃんと伝えたいだろ?だったら、無事でいろ』
 


 彼なりの励ましだと悟ると、僅かに胸の奥底にある不安と恐怖は消えた。

 きつく抱き締めると、フェンリルも応えるように顔を擦り寄せてくる。



「行ってらっしゃい」


『ミアも、気をつけて行け』



 別れの挨拶を済ませ、互いの瞳に宿る想いが光となって輝いた。

 頷いた後は、もう振り返らずに走り出す。

 こだまして聞こえてくる微かな声を頼りに、道無き道を進んで行く。

 道中茂みに転がる魔物の死骸に、顔を顰めながらも、慎重に辺りを確認する。

 魔物と鉢合わせたら戦う術を持ち合わせていないミアにとっては、死を宣告されたようなものに近い。