ここが……精霊の森。




 焦げた匂いでむせ返りながらも、森の奥から微かに聞こえてくる金属がぶつかり合う音に、間違いなく騎士達がいることを感じ取った。

 微かに風と共に流れてくる血臭に、迷う暇はないとフェンリルの背から降りた。



「みんな、ここからは別行動よ。相棒の騎士の元へと向かって」



 生身で戦う第四部隊の彼らには、魔獣達以上に必要な存在はない。

 獣人の力があるとは言え、出せる力は限られてくる。死と隣り合わせな状態を、少しでも早く脱するには魔獣達と共に戦う必要があるのだ。

 誰かの血を流すようなことは真似は絶対にしたくない。



「彼らを死なせては駄目。さあ、行って!」



 ミアの指示に一瞬躊躇ったようにも見えたが、瞳に宿る闘士は揺るぎない。

 隊列を崩して森の奥へと姿を消していく我が子を見送り、残ったフェンリルに視線を戻す。



「フェンリル。神獣の導きを私に」



 強く頷くフェンリルは目を閉じると、靡く真っ白な毛並みを黄金に輝かせた。



 なんて美しいの……。



 神々しい姿に、この状況に相応しくないとは分かりつつも、内心感嘆の声を漏らす。