風を切る感覚に緊張感を感じつつも、その凄まじい速さで走る壮観な魔獣達の姿に、緊張感は闘志へと変わっていく。

 常に三角形を維持した隊列を崩さぬように走る魔獣達は、本能をむき出しにして先頭を走るフェンリルに続いて走る。



 お願い……どうか無事でいて。



 フェンリル達の力を借り騎士達を追いかけるように、王都から南に向かって暫く走っていくと、燻る黒煙が空高く舞い上がっていた。

 時折大地が揺れる度に、益々黒煙は太く濃い煙を立ち上げていく。

 町や村の住民達の避難は事前から滞りなく行われていた様子で、被害は最小限に抑えられていることにまずは胸を撫で下ろす。

 行く先々の町の静寂さを見るに、魔獣騎士団は魔物達の行く手をしっかりと拒んでいるようだ。大きく荒らされていることはない為、復興までにそう時間は掛からないだろう。

 もぬけの殻になった町を突っ切りながら、ひたすらに黒煙を目掛けて走る。

 突き進めば突き進む程、人が寄り付かない枯れ果てた森が口を開けるようにして待ち受けていた。ただその森すらも救いを求めるように、吹き荒れる風と共に悲鳴を上げた。

 岩肌ばかりが顔を出し、枯れた木の幹が身を寄せあっては、立ち込める黒煙の煤を身にまとっている。