『ミア。あんたにしか頼めない事がある』


「うん」


『神獣を喚べ。神獣の導きを、全てミアに託す。これ以上世界を脅かさないよう、奴を止めろ』


「分かった!」



 迷いのないミアの返事に、フェンリルは小さく笑う。

 やる気に満ち溢れた母親の姿に、魔獣達も負けじと力を体に宿す。



「行こう!私達は負けない!」



 リヒトが守りたいものがあると言うように、ミアにも守りたいものがある。召喚士という誇りを持って、彼女は前へと突き進む。




 待っていて。皆……団長……!



 乗れと言うフェンリルの背に跨り、先頭を進む彼に続くように、魔獣達も獣舎から一斉に飛び出す。朝日がゆっくりと夜空に溶け込んでいく空を見つめながら、ミア達は風のように大地を駆け抜けて行った。



「……ご武運を。ミアさん」



 壁に預けた体をどうにか動かそうとするものの、体力の限界だと動かない体にやれやれと薄ら開いた目を閉じた。


 一人残されたハイロンのその声は、獣舎に小さく響き渡ったのだった。