『すまない。心配かけたな』


「ううんっ!そんな事ないよ!私も色々とごめんね」


『今回はお互い様だ。さて、だらけた皆を起こすとしよう』



 大きく息を吸ったかと思えば、鼓膜を大きく揺らす声でフェンリルが吠えた。ビクリと肩を震わせるミアを、フェンリルはそっと尻尾で包み込む。

 眠気覚ましには少々悪すぎるフェンリルの鳴き声に、身体を震わせながら眠気眼で次々と魔獣達が起き上がる。



「みんなっ……!」



 普段通りの大きな伸びを一つしてから、フェンリルだけずるいと甘えた声でミアを求める魔獣達は、すっかり元気だと訴えかけてくる。

 一匹ずつ時間を掛けて甘やかしてあげたかったが、フェンリルの低い声に今優先してやるべき事を瞬時に考える。



『どうやら、オレ達がこうしている間に大きく動き出したようだな』


「魔物の群れが現れたの。騎士の皆は身一つで魔物と戦ってる。お願い、どうか皆に力を貸してあげて欲しいの」


『……遂に、奴も眠りから覚めた』


「何か知ってるの?」


『邪神バハムート、奴の封印が解けかけている。眠っている間に、神獣の力で過去を見た。あいつは同じことを繰り返すつもりだ』



 バハムートという言葉に、こうしては居られないとフェンリルと目を合わせる。