逃げられないと覚悟してすぐ、噛み付くような勢いでエルザが睨みつけてきた。



「召喚士が魔獣に向き合わないなんて……一体どういう事?」


「す、すみませんっ!」


「しかもあれ程従わない魔獣を召喚するなんて、以ての外。馬鹿でもやらないわよ。それでも貴方、本当に召喚士なの?」



 本音を撒き散らかすエルザに何も言えないでいると、彼女は人差し指を鼻スレスレに突き立ててくる。ミアはその圧に負けて、動けなくなる。



「――貴方、彼の何のつもり?」


「えっ?」



 突然の質問に何を聞かれているのか分からずにいるミアを、エルザは更に鋭い目で見つめてくる。



「貴方が彼の何だろうと、私は貴方を認める気はないわ。彼は私の傍にいる事こそが、本当の幸せなのよ。懐かれたからって調子に乗らないで」



 エルザの言葉に、ナイフのように切り裂かれていく心を隠せず熱くなった目頭に、我慢だと言い聞かせるように唇を強く噛み締める。

 納得のいくミアの反応に、満足気に笑うエルザは踵を返して訓練へと戻っていく。