へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 ただ目の前で頑張る魔獣達の姿を見て、無理やり気持ちをねじ伏せ、これ以上何も見ないと目を閉じた。

 そして完全とは言い難い魔法陣で召喚術を発動しようと息を整えていると、フェンリルが吠える。



『この馬鹿っ……!』



 ねっとりとした絡み合ってくる魔力が一気に這い上がって来たかと想えば、喉が締め付けられていく痛みに目を勢い良く開けた。

 大きな頭をフェンリルが取り押さえているものの、してたまるかと抵抗する何かがいた。締め付ける魔力を振り払い、その何かを睨みつける。



「っ……!」



 牙には猛毒を持ち、自分よりも遥かに大きな敵を丸呑みにする獰猛な巨大な蛇――暴食の大蛇《グラトニーサーペント》。

 それがミアが召喚術を発動させる前に、無理やり扉をこじ開けるようにして現れたのだ。



「フェンリル!そのまま押さえつけておいて!」


『言われなくともやってる!どうするんだよっ、これ!!』



 珍しく取り乱すフェンリルに謝りながら、魔法陣の文字を書き換える。契約も交わさずに、力任せに地上に顔を出そうとするグラトニーサーペントを、どうにかして術を解いて引き戻そうとするが、抵抗する魔力が異様に強い。


 どうしようっ……!このままじゃ、皆が危険な目に遭っちゃう!何か、何か方法は……。


 異例の事態に頭が徐々に真っ白になっていく中、魔法陣を打ち消す解除の魔法が組み込まれた弓矢が地面に刺さる。



「貴方……ここで何やっているの」



 芯のある真っ直ぐな声と共に近づいてくる足音。振り返れば訓練に参加していた副団長がこちらにやって来た。