半ば強引に力がミアに流れ込んで来て、狼狽えると次の瞬間、何かが小さく爆発して白い煙が部屋を埋め尽くす。



「ゲホッ、ゲホッ!」



 咳き込むユネスが慌てて窓を開けて、新鮮な空気を取り込むと、霞んで消えていく白い煙の中から影が揺れる。

 煙に涙目になりつつも、揺れる影に召喚が成功したことを確信したミアだったが、窓を開けて振り返ったユネスと共に目を見開いた。

 立派な尖った狼のような耳に、フサフサとした尻尾。威厳ある風格はどんな獲物も目があったら最期、確実に仕留められること間違いなしだ。

 ……ただ魔獣でなくても、“彼”ならやってのける可能性は無きにしも非ずだが。



「お前、一体何をした……」



 目の前に立つのは紛れもなく、美しさを秘めた団長リヒトの姿――だが、明らかに先程と姿形が異なるのは一目瞭然だ。人の形《なり》をしているものの、人ならざるものが生えている。

 わなわなと震えるリヒトの雷が落ちるまで、あと寸刻。ミアは目の前に立つ姿を変えた上司に向かって、遠慮なく驚きの声を上げた。



「えぇええーっ?!?!」



 ミア・スカーレット 十八歳 職業召喚士。

 魔獣騎士団 第四部隊配属初日にして――上司となる騎士団長リヒト・アンバネルを召喚してしまったのだった。