いつにも増して召喚術に気合いを入れるミアは、訓練に向かう魔獣達の隣を歩いていた。

 昨夜の出来事を思い出すだけで幸せに包まれ浮かれるミアを、フェンリルは喝を入れるべく訓練場へと向かわせたのだ。

 監視役として斜め後ろから着いて歩いてくるフェンリルだが、まだ浮ついた様子の彼女を呆れた顔で見つめている。



 今日はどんな魔獣を召喚しようかな〜!



 手に魔力を注ぎ込みながら、頭に思い浮かべる魔獣の姿。それはどれも伝説上の魔獣達ばかり。

 今にも鼻歌が零れそうになるのを何とか堪えて、思い描くものを膨らませていく。

 一気に自信を身につけたのはいいが、空回りするのではないかと一緒に歩く魔獣達は若干ソワソワしている。そんな魔獣達の心を読み取ったシュエルが、ミアに声を掛けた。



「ミア、何をそんなに張り切ってるの?」


「もちろんっ、召喚士としての勤めよ!!」


「訓練に参加してくれるのはいいけど、今日は本部から副団長が来るから実戦ばかりだよ?」


「副団長って、ユネスさんのこと?」



 知らない情報に浮かれていた気持ちが、地面へと着地するようにミアに冷静さを引き戻させた。

 キョトンとする彼女に、シュエルは閃いたように口を開く。



「そっか。ミアはまだ会ったことないもんな。うちの騎士団には副団長が二人いるんだ。ユネスさんと、もう一人。本部を団長から任せられる程の凄腕騎士なんだ」


「そのもう一人が今日ここへ?」


「うん。本番を兼ね備えた実戦になりそうだから、今日は中々にハードだと思う」



 シュエルの言葉に、周りにいた騎士達は顔を曇らせながら小さく溜め息を零す。