忌々しい煙も、咳き込みもない。
初めて成功した召喚術への喜びが湧いて出てくる中、何故か彼の姿が過ぎる。
団長に褒めて貰いたい、なんて……なんでこんなこと思うの?
頑張る姿を誰かに認めてもらいたい、そう思わないこともなかったが、初めて感じる感情に戸惑いを隠せない。自分を見て欲しいという感情がいつの間にか暴れ出し、いつしか彼に会いたいとまで思ってしまう。
なんだろう、胸がドキドキする。団長を思うだけで――なんか苦しい。
リヒトに触れられた髪や頬にまだ温もりが残っているようで、妙に擽ったい。彼を思えば思うほど、自分の中で何かの歯止めが利かなくなる。
これ以上考えてはダメだと首を横に振って、知らぬ間に上がってきた体温を下げようと試みる。
それがペガサスには面白かったのか、真似て楽しそうに首を振った。そして、やれやれと言った呆れ顔のフェンリルも首を横に振った。
呆れて立ち上がるフェンリルは、檻の中へと戻ろうとするが僅かに足取りがおかしい。
ペガサスに夢中のミアをいい事に、フェンリルはバレないようにしながら獣舎の影に隠れていった。



