朝から上機嫌のミアにとことん甘える魔獣達から愛情を貰い受けていると、フェンリルは何やら魔獣達に声を掛けていた。それを気にしつつも粗方朝の仕事が終わる頃には、魔獣達は騎士達と共に、街近くの森での魔物討伐の依頼をこなしに出かけて行った。
皆が居なくなった獣舎の掃除が終わり、一息ついた所で召喚術の特訓を始めることにした。
『さて。オレはあんたの監督をしておいてやる』
「すっごく心強い」
『そう言っててまた弱音吐いたら、暫くの間はブラッシングさせないからな』
「ひどいっ!!」
頬を膨らませながらも、軽くなった心と共に召喚術を発動させるための魔法陣を描く。
そこまでは完璧と言っても良かったが、術を発動させた途端に失敗を知らせる煙が上がった。
くしゃみをして伏せるフェンリルに、慌てて駆け寄った。
「ごっごめん!!」
『いい。この煙にも慣れてきた』
もう少し説教じみた嫌味を言われるかと思ったが、フェンリルの表情は真剣そのものだ。
『あんたの魔力は、どうも引き寄せる力が足りない』
「引き寄せる、力?」
『召喚には共鳴が必要だろう。だというのに、あんたから放たれる魔力はどうも引きが弱い。強く召喚したい対象を思い浮かべて、来いと喚べ。今は神獣は後回しだ。比較的気性の穏やかなペガサスでいいから強く思い浮かべて喚べ』
「分かったわ」
『召喚士として未熟なのは分かるが、もう少し自信を持て。怖がる気持ちが相手にも伝わるんだ。あんたの優しさに触れれば、召喚獣なんかいとも簡単に懐く。いい例がここには沢山いるだろ?』
「ふふ。ありがとう。じゃあ……やってみるね」
吹き抜ける風に任せるように魔法陣の光を泳がせ、術を生み出す。緻密に描かれていく魔法陣の文字達は、意志を持つかのように動き出す。



