言われる覚悟は出来てはいたが、いざそれが目の前にやってくると頭は真っ白になっていくばかり。
「どうした?まさか召喚出来ない、なんて事ないよな?」
煽るような言い方のリヒトにユネスが再び辞めなさいと口を挟むが、そのやり取りでさえ遠くに聞こえる。
やるしかない。やるしかないのよ、ミア。私は召喚士……召喚士なんだから。私はここでずっと働いていくって決めているんだから、魔獣を召喚しなきゃ始まらない。
浅くなる呼吸でなんとか頭に酸素を送り込もうとするものの、こんがらがった頭にはそれだけでは足りない。
急かされるようにリヒトから声を掛けられ、真っ白になった頭で召喚魔法を唱える。光輝く魔法陣が足元に展開され、締め切った部屋にどこからともなく風が吹く。
どうか神様……私に力を貸して下さいっ!
願いを込めつつ、半分力任せで召喚魔法を発動させると、神々しい光が部屋の外まで漏れだした。
瞼をそっと閉じて、魔獣が放つ魔力を感じて力を掴むようにそっと手を差し伸ばす。