リヒトが止めようとするが、ミアは無視して言葉を続ける。



「先日のゴブリン退治では、第四部隊の騎士達が残された魔獣達と共に戦いました。本来であれば召喚主の元にいるべきはずの魔獣達は、第四部隊の騎士達のお陰で本来の魔獣の姿を取り戻したんです。そんな彼らをお荷物だと言って欲しくはありません」


「ほう……遂に手懐けたのですか。あの厄介な魔獣達を」



 驚くグレモート卿に続くように、あれだけ文句を零していた他の部隊長達も、動揺を隠しきれていない様子で各々目配せをしている。



「しかしですね、ミアさん。ゴブリン退治如きで浮かれる騎士団はそういませんよ。加えて事は深刻なんです。どこの誰が召喚したかも分からない魔獣を訓練させている間に、悪き力によりこの国は滅びかねない」


「っ……」


「分かりますか?お荷物はお荷物のままなんですよ。あなた方の部隊には、事態に抵抗する為の策を持ち合わせていない。お荷物だと言われたくなければ、賢者が召喚した神獣でも召喚してから言って下さい。まあ、そんな人間離れしたこと、まだ世間を知らない貴方には不可能でしょうけど」



 彼の言葉に爪がくい込み、今にも血が流れそうになる程の力を込めて拳を握りしめる。怒りの感情が、ある一つの意志を生み出した。


 ……そこまで言うなら、やってみようじゃないの。これ以上皆を、団長の事を悪く言わせないんだから。


 固い絆で結ばれた仲間想いの彼らを侮辱された怒りは、ミアにとって大きな原動力へと変わっていく。