ミアを楽しそうに見つめるグレモート卿の視線を遮るようにして、リヒトが席を立った。



「第四部隊に配属された召喚士です。この会議で挨拶させようと連れて参りました」


「これはこれは……”飼い犬”の元へ新しい”玩具”が用意されたのですね」


「お言葉ですが、彼女への侮辱は控えていただきたい」


「侮辱?玩具というのは事実でしょう。どうせ、すぐに貴方達が壊すのですから。そのせいでどれだけ他の部隊に、任務の負担が回っているかご存知なはずだ」


「……」


「いい加減理解してください。第四部隊はお荷物なんです。部隊解体をお勧め致しますよ」



 グレモート卿の言葉にリヒトはきつく睨みつけるが、それ以上食いつこうとはしない。

 ゆっくりとリヒトの元へと近づいて来て、見下す目を向けると、ミアとリヒトにだけ聞こえるように囁いた。



「力を有しているからと言って、貴方達が穢れた血を持っているのには変わりはない。物好きな殿下のお陰で生き長らえていることをそろそろお分かりになりなさい――飼い犬共が」



 飼い犬、それが獣人としての血を受け継ぐ彼らに対しての侮辱であることを理解した途端、ミアは間髪を容れずにグレモート卿の前に立った。



「お初にお目に掛かります、第四部隊の召喚士をしております、ミア・スカーレットと申します。失礼ながら先程のお言葉、撤回して貰えませんでしょうか」


「おやおや……これは活きのいいお嬢さんだ」



 ミアの言葉に、部屋の中が僅かにざわめきが起こる。だからと言って、ミアは屈することなくグレモート卿を見据えた。