リヒトの迫力にひぃ……!と声を上げそうになるけれど、この場の空気を変えるように優しい声が宥めた。



「そうやって威嚇しないの。まったく……せっかく来てくれた召喚士なんだから、もっと丁重に扱わないとまた逃げられるよ?」


「……チッ」



 リヒトの舌打ちにも動じず、二人の間に割って入ってきたのは猫目の男だった。



「ごめんね〜。うちの団長ったら絶賛不調期でさ。色んな事にイライラしちゃう時期なんだよね」


「は、はあ……」


「あ、僕は副団長をやってるユネス・ファウアー。ユネスでいいよ。どうぞよろしくね、ミアちゃん」



 ん!と手の平を突き出してきて、慌ててミアも手を差し出すと優しく握手を交わしてくれた。

 人懐っこい優しい人がこの場にいてくれたことに感謝の気持ちが止まらず、ミアからその手を何度も何度も拝むように握りしめた。



「ユネス、馴れ合うな。どうせ、明日には根を上げて消えていくぞ」


「だーかーらー!そういうこと言わないの!」


「それより、こいつがどれ程の腕前か確かめる必要がある。おい、お前。今ここで魔獣を召喚しろ」
 



 突然の命令にギクリと肩を震わせ、言われたことを理解すればするほど背中に冷や汗が伝っていく。