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「桜林、体は大丈夫か?」
「はい、おかげさまで……昨日は本当にありがとうございました」
 話し合いが終わって、教室に戻るとすぐに授業が始まった。先生への話し合いが終わってもなんか腫れ物のように扱われるし……五時間目は体育があるから憂鬱だった。
「あ……保健体育、レポート忘れちゃった」
「え、じゃあ……見学するの?」
「うん、だから一緒に行く」
 菜央とは昼休みに話した。
 軽く朝陽が過呼吸のことを話したらしく……少しだけ細かく話した。彼女は同情するわけでもなく泣いて抱きしめてくれて、菜央が友達でよかったと思った。
 更衣室に2人で向かい、更衣室前で待っているといろんな言葉が飛び交う。
「今日は見学?」
「あの閉じ込められた子だよね」
「体育全然やらないってほんとだったんだ」
 慣れていたはずなんだけど……昨日のことがあったからか泣きそうになる。どうしよう。
「千紘〜お待たせっ!」
「な、菜央……お帰り……」
 この場を助けてくれたのかすごく元気に声をかけてきた。
「ちょっと! あんたらさ、大人数でいじわるしてさあ!」
「いや、あの……だって体育全然やらないし」
「そんなのどっちでも良いから! 私の大切な子にそういうのやめてっ!」
 菜央は、「よしっ! 千紘行こ」と手を掴まれグラウンドへと連れていかれた。グラウンドに並ぶけど私だけ制服ですごく目立つ。セーラー服だから襟の部分がすごく暑い。
 今日はテニスらしくて……テニスコートへ向かった。みんながやっている間は雑用係だ。ボール拾いに記録係……終わればボールとラケットが入っているカゴを運ぶというあまり体力がない私には大変だった。
「千紘、大丈夫? 手伝う」
「ありがと、菜央……助かるよ」
 テニスコートの倉庫に二つ閉まってから集合場所に行くともう号令は終わっていて、そこでもまた雑用。
「菜央は早く行きなよ、着替えしなきゃでしょ」
「え、でも……」
「大丈夫、2往復するから」
 用具の入ったカゴなどを倉庫にしまいに行き、先生に倉庫のかぎを預かっていた私は鍵を閉めて校舎のほうに歩いていた時、突然上から水がかかった。
「あっ、ごめん〜お花に水やってたらかかっちゃった〜」
「……っ……」
 ホースを持ってるのは、あの朝も会った昨日の人たちだった。私は自分の状況を理解した、私が着てるのは白色のセーラー服……濡れて肌に張り付いて気持ち悪い。何よりも傷が見えて、る……。どうしよう、もうダメだ。終わった。
「もしかしてその見えてるものが“長袖”の原因?」
「……っ!」
「まじで気持ち悪い〜」
 想像していたけど、本当に言葉で言われると辛い。泣きそうになる。どうしよう、今までとその言葉しか出て来ないくらい私の心は乱れてしまっていた。
 また言われた……気持ち悪いって。もう、やだな……帰りたい。もういなくなりたい。
「……ごめんなさい」
 もうどうしよう、私、私は……。
「何やってんの!?」
「お、応時くんっ!? どうしてっ?」
 彼女の声で亜樹くんがきてくれたんだと思い下を向いていた顔をあげた。
「……大切な子がいじめられてる現場見て黙ってる奴いないと思うけど」
 亜樹くんは、自分が着ていたジャージを私にかけてくれてそのままお姫様抱っこされる。そのまま保健室へむかった。その途中に亜樹くんは口を開く。
「ねぇ、千紘ちゃん」
「……?」
「俺さ、何もできないガキだけど千紘ちゃんのこと守りたいって思ってるよ」
 いつもの爽やかな亜樹くんじゃない。彼はすごく真剣な顔をしていて保健室に到着して椅子に私を座らせた。
「千紘ちゃん、好きだよ。千紘ちゃんのこと守ってもいいかな?」
 そう言われ思わずうなづいた時、座ったままぎゅっと抱きしめられ亜樹くんは自分のジャージを私にかけてくれた。
「これ着てて。セーラー服乾かした方がいい」
「うん、ありがとう」
 亜樹くんに出て行ってもらいセーラー服を脱ぐと借りるジャージを着た。