『愛花ちゃん、好きだよ。付き合って欲しい』

『わ、私も好き。ずっと好きだったの……恭平くんっ』


 そんな言葉の後に抱きしめ合うふたり。とってもドキドキするシーン……だが。


「エゴサしなきゃ」


 ……めちゃくちゃ空気読めないやつがいる。

 ここは、キャッキャ言うところだと思う。だけど、目の前にいる男はそんなことはない。


「ねぇ、あやくん。今をときめく“ハル”ちゃんが出てるんだけど。それはなくない?」

「は? それ言うなら、ハル。国民的俳優の“松重綾汐”出てんのに無反応はないだろ」


 そんな会話をしてる私たちは、小学校が同じだった幼なじみだ。
 それに目の前にいるあやくんは松重(まつしげ)綾汐(あやせ)といって赤ちゃんモデルから大活躍している現役の俳優さん。

 私は、ハルこと汐崎(しおさき)遥香(はるか)。小学生の時にスカウトされて、あやくんを追うようにモデルになった。


「せっかく初共演したのに、感想ないわけ?」

「は? ないな」

「釣れないなぁ……もう」


 私はとってもドキドキして、君にもそんなふうにいわれたいって思ったのに。


「あやくん、また練習付き合ってくれる?」

「まぁ、いいけど。あっ、雑誌買ったよ。表紙おめでとう」


 でも、きっと叶うことはない。

 だけど、ドラマの中だけでも恋人にもう一度なれたらそれだけで幸せだ。



        《END》