愛たい夜に抱きしめて





お前呼びは恐れ多すぎるし、なにより彼のファンに殺されかねない。いや。もしかしたら本人にやられるかも……!!




「大丈夫ですよ。兄の恩人であるあなたに、手出しも口出しもさせませんので。もちろん、僕も同様にです」

「そ、そうですか……」




わたしの思考、完全に読まれてる……。

ニコニコ笑顔で読まれてしまっている……。




「で、では、檪くん……」

「………、」

「じゃ、じゃあ、紫昏さん……」

「………、」

「な、なら、紫昏くんで……!!」




もうこれ以上は譲れない!となかばヤケクソになりながら叫べば、ありがとうございます、とようやくオッケーがおりた。


もうケーキ食べずに帰りたい……。




「それでは乃坂さん。肩の力が抜けたところで、本題に移っても大丈夫ですか?」

「むしろ、今の今まで本題じゃなかったのか聞きたいです……」

「はい。世間話の一種です」

「世間話……」