自分がなんのために。そもそも何を伝えようとしているのか、自分でもわからない。
けど、でも、言わなきゃいけない気がした。
まっすぐと。紫昏くんの目を見て。
「えっと、わたしが何を言いたいのかというと、優劣と同じように、善悪にも人それぞれ基準があるからこそ、紫昏くんは自分がいちばん悪いって思ってしまっているんだろうけど、わたしにしてみれば、」
こんなの、そんな環境の渦中にいないわたしから言われたくないことだとも思うし、ひどい場合だといろいろ誤解されることだってあると思う。
けど、わたしは。
「─────紫昏くんのお父さんも、お母さんも、もちろん紫昏くん自身も。みんな等しく、悪いんだと、思う」
彼が絶対的悪だとは、どうしても思えなかった。
……ああ、やっぱり、不快に思ったかな。
なんで何も知らないやつが、とか、思ったかもしれない。
けれど、それでいい。嫌われてしまえば、避けられて、存在を認識しなくなって、この奇妙な関係は終わるから。



