愛たい夜に抱きしめて





わたしの呆れたような言葉に、紫昏くんはそれもそうですね、とお得意の苦笑いを落とす。




「乃坂さんは、もう気づいていらっしゃいますよね?」

「……何に?」




決して自分から追及するような言葉を言わないわたしに、紫昏くんは苦笑いを深めて。

夜の冷えに似たような、ひどく凍えた言葉をこぼす。




「────僕と氷昏兄さんが、血のつながった兄弟ではないということに」


「……うん」




紫昏くんはきっと、わたしが気づいていたことに、とっくの昔に気づいていたんだろう。


触れてはならない事情があるんだろうなと思って、あえて何も聞かないでおいたのに。知らないでおいたのに。

紫昏くんは、ここで全部話してしまうつもりらしい。




「……どうして気づいたのか、伺っても?」

「……まず、ふたりの顔のちがい、かな。兄弟にしては、顔のつくりや雰囲気が諸々似てなさすぎたし、あと、家族に対しても敬語って、変だなって。あの敬語を嫌ってそうな氷昏に対して使ってるのが、特に」