答えられる、範囲。
その言葉に、自然と紫昏くんの手元に視線がいった。
理由は、よくわからないけど。
わたしがいちばん知りたかったのは、たくさんたくさん抱いた檪家の違和感より、紫昏くんの黒に染まった爪のことで。
……けど。
「……じゃあ、ひとつめ。ふたりのご両親は、存命だよね。いま、どこにいるのかは、教えてもらえる?ここを借りている挨拶をしておきたいんだけど、」
なぜかそれは、聞いちゃいけない気がした。
否、聞けなかった。
「……はい。きちんと存命ですよ。ふたりとも、きっと健やかに過ごしています。いまは海外で仕事をしているはずです」
「……えっと、一緒に住んでいないのは、何か事情が?」
「そんなに込み入った事情はないんですけど……、おふたりは僕らの顔が好きじゃないみたいなので」
「それはもう込み入った事情があるって言ってるようなものだよ……」



