愛たい夜に抱きしめて





その言葉に、思わず目をぱちくりさせた。

だって。




「……そういうの、わかってたんだ」

「乃坂さんは僕のことを一体なんだと思ってるんですか……」



その時、ようやく紫昏くんが、眼前に広がる夜の世界ではなく、わたしへと目を向けた。


あの綺麗で吸い込まれそうな、夜に瞬くくすんだ練色が、闇の中で唯一輝いている。




「あんな風に強引にことを進めておいて、簡単に信用が勝ち取れるとは思ってませんよ」

「ま、まあね……」



どうやら気付かれていたらしい。


まず、違和感ありまくりの兄弟に、不信感をゼロにしろというのが無理な話で。

態度に出てしまうのは、仕方ないと思う。


……でも、あんまり表には出してなかった、と思うんだけど。

目敏いなあ、紫昏くんは。




「ですので、乃坂さんが抱いている疑問について、可能な範囲でお答えしたいと思いまして」