教室がどよどよざわめく中、わたしの後ろにすとん、と座って、そうそうに顔を腕の中に沈めてしまう。
「……え、あの、なん、で、」
思わず、後ろを向いたまま、かすれた声で聞いてしまえば。
「……?なんで、って。き、……の、……、ねえ、やっぱ名前で呼んでい?」
きよら、と呼ぼうとして、乃坂さん、と言い換えようとしたんだろうけど、顔を顰めたまんまやめてしまった氷昏。
小さい声だから、ざわついている教室内では聞こえてない、はず。
「それは、別に、いいけど……、なんで?」
「……なんか、今日、行く準備してたら、しぐれが、きよら、おれらと仲良いの隠したいかもしれないから、名前で呼ばないほうがいいかも、って言ってきて」
ぶう、と頬をふくらませながら、ぷい、と隣を向いた氷昏にならって、紫昏くんの方を向くと。
ふたりの矛先が向いた紫昏くんは、居心地が悪そうに苦笑いしていた。



