夜にまぎれてしまいそうなほど、小さな声。
そんな言葉に、思わずパチパチ瞬きをして。
「……えっと、余計なお世話かもしれないけど、そんなこと言うと、普通は自分に好意を持ってるんじゃないかって勘違いされるから、気をつけたほうがいいと思うよ」
気遣い、とも呼べない、忠告みたいなわたしの言葉に、紫昏くんは破顔した。
……ひどく、困ったように。
「─────勘違いしてくれたほうが、余程いいです」
「……ごめん、いま、なんて?」
口を開いて、また閉じて。
諦め慣れた口からは、その場しのぎの言葉しか、出てこない。
「……いえ。なんでもありません。体が冷えてしまうので、ほどほどにしてくださいね」
「……うん、気をつける」
ああ、いわかん、違和感。きもちわるい。
どこもかしこも言いようのない違和感という名の気味の悪さに支配されていて、気の休まる時なんて、これっぽっちもない。



