「─────本当に、毎度毎度兄がすみません……」
「ま、まあ、もう慣れてきたから。それに、紫昏くんのせいではないし」
「いえ。完全に僕の監督不行き届きなので」
玄関でのこんな押し問答もいつものこと。
というか、紫昏くん、氷昏のお母さんみたいな立ち位置なんだよね……。弟のはずなのに……。
「じゃあまた明日」
「はい。明日の朝もお待ちしています」
……どうやら明日の朝もわたしがお邪魔するのは決定事項らしい。
「……うん、」
ここで食い下がっても、うまく丸め込められてしまうことは、今まで過ごした一ヶ月ほどでわかりきっている。
実際、当初は食い下がっていたけど、その度に紫昏くんに言いくるめられてとうの昔に諦めてしまった。
「今日もありがと。それじゃあ」
ばいばい、と手を振って。
今日も言葉にするのを諦めた違和感に、見ないフリをした。



