愛たい夜に抱きしめて





キッチンの方から、食器がぶつかり合う音が聞こえるのに、四角形のテーブルに向かい合わせで席についている私と氷昏さんは、ひたすらに無言を保っていた。




「………、」

「………」

「………あの、この前は、ありがと」

「い、いえ。ただ、一度くらいは善行しておいた方がいいかなって思っただけ、なので」




……ああ。紫昏くんのところ、行っちゃダメかなあ。

手伝いたいのに、座る前に〝ふたりはここで座って待っててください〟って無言の圧付きで言われた言葉がとどまらせる。




「……おれに対して、敬語とかいいから。それに、気軽に氷昏って呼んでくれて構わない」

「あ、で、じゃあ、わたしも、澄良で」

「……ん、わかった」



ふっと、かちんこちんに固まっていたアイスを溶かすように微笑んだ氷昏くんに、ようやく息を吸えた気がした。