꙳☄︎
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「お、おじゃまします……」
「そんなにかしこまらなくてもいいですよ」
じゃあ、紫昏くんも敬語口調をやめてほしい……。
そんな意味をこめた目を向けていたら、サラッと華麗に流されてしまった。
置かれている家具はほとんど同じなのに、部屋の雰囲気はまったく違う檪家の廊下をそろりそろりと歩いていれば。
がちゃりと、廊下に接するドアが開いて。
「……はよぅ、しぐれ」
眠たげに目をこすりながら舌ったらずな声を上げたその人は、息を呑むほどの美貌を携えていた。
亜麻色をもっと薄くしたような、透明感のある髪の毛。瞳はくりっと丸い鈍色。
そんな瞳に、紫昏くんの後ろに隠れるようについてきていたわたしを、大きく瞬きをしながら映して。
「…………、お、じゃましてます」
「…………………、どっかで会ったこと……ないか」
「氷昏兄さん、命の恩人にそれはないですよ……」



