愛たい夜に抱きしめて





「あと三部屋空いているので、そこは乃坂さんが自由に使って構いません」

「あ、は、はい……」

「お部屋の方をご案内しましょうか。ではまず近場の寝室から、」




リビングダイニングから繋がっている、おそらく寝室の扉に手をかけた紫昏くんの上に、自分の手を乗せた。




「それはいいよ。紫昏くんにはもうたくさんお世話になってるし。荷物ありがとう。部屋は自分で見るから気にしないで」

「………、そうですか。なら、僕はそろそろお暇しますね」

「うん。ありがとう」



ゆっくりと紫昏くんの手の上から下ろせば、紫昏くんもドアノブにかけた手を下ろしてくれた。


帰り際。紫昏くんが思い出したように付け足した言葉が。




「……あ、乃坂さん。ベランダには極力出ないようお願いします。風が強いと危険ですので」

「……ん、わかった」



なぜかわたしには、警告に聞こえた。