そのまま紫昏くんは、スタスタとエレベーターから見て右手にあるドアの前で立ち止まる。
「乃坂さんの住まいはこちらになります」
「あ……、はい」
案内されて、持っていた鍵でドアを開ける
……と、廊下を抜けた先に、とんでもなく広い空間が広がっていた。
わたしが住んでたボロめアパートとは大違い。
8畳くらいの部屋だったのに対し、ここは何畳あるのかなんて考えたくもない。
広々としたアイランドキッチンに、黒革のL字型ソファ。
壁に取り付けられた60インチはあろうかというほど大きなテレビ。その他、照明も、テーブルも。何もかもが高そうな代物ばかり。
「……あ、の、これは……」
「この部屋にもともと備え付けてある家具です」
「これ全部?!?!!」
「はい。寝室にはウォークインクローゼットとクイーンサイズのベッドもあります」
「く、くいーんさいず……」
見ていないのに、デカデカと部屋の中心に置かれている様が目に浮かんだ。



