愛たい夜に抱きしめて





自分とあまりに差異がある空間に若干引き気味になりつつも、すたすたと慣れたように歩いていく紫昏くんの後ろを、こそこそヒソヒソとついていく。




「ここには計6つのエレベーターがあるのですが、僕たちが使えるのは右端の二機だけですのでご注意ください」

「……わかった」

「そして、エレベーターに乗る前に、ここにあるリーダーにまたかざしてください。そうすれば自動でエレベーターが来ますので。ちなみに、居住階以外のボタンは押せません」



……なるほど。これがトリプルセキュリティ。


厳重かつ面倒なそれは、外から見れば、おそらく要塞。けど、中から見れば、たぶん監獄のようなもの。




「乃坂さんと同じ階にはこれからお住みになる部屋も含めふたつしか用意されていないので、安心してください」

「は、はあ……」




言いながら、紫昏くんはかちり、と最上階のボタンを押した。


……ああ、なるほど。これ、めちゃくちゃお値段高いタイプのお部屋だ……。