愛たい夜に抱きしめて





わたしの切羽詰まった表情と、目の前の高層マンションを見比べる紫昏くん。

そりゃそうだ。紫昏くんは謂わば仲介人なのに、わたしに文句を言われても困ってしまうだろう。


けれど、こんな高層マンションに住めるほどのお家賃をわたしは払えない。払えたとしても、わたしは1ヶ月で息絶える。




「あの、乃坂さん、落ち着いてください」

「こんな、明らかに高そうなマンションのお家賃なんて、わたしが持っているお金でも1ヶ月で底が、」

「乃坂さんが住むのは、賃貸マンションとは違い、分譲マンションなんです」




わたしを落ち着かせようと、段ボールを抱えながら一息で言い切った紫昏くんに、思わずぽかん。


ぶ、分譲、まんしょん……?

そんなの、



「もっとムリ、」

「乃坂さんが購入するのではなく、僕の両親が購入した一室を、乃坂さんにお貸しすると言っているんです」