愛たい夜に抱きしめて


꙳☄︎





「……あの、紫昏くん」

「どうされましたか、乃坂さん」




さっきまでタクシーの中がシーンと静まり返っていたとは思えないほど、流暢に会話ができている。


……まあ、それもこれも。




「ここが、これからわたしが住む家、なんですか?」

「はい。そうです」




すべて予想だにしなかった、わたしの〝新居〟のせいなのだけど。




「……いや、いやいやいやいやっ、わたしのあのオンボロアパートのお家賃、いくらだと思ってるんですか?!あれでも4万弱なんですよ!?なのに、なのに……っ、」




ビシィッ、と目の前に立ちはだかるソレを指差して。




「こんな高層マンションに住めだなんておかしいです!」




キラキラと輝く、首が痛くなるほど高いガラス張りのマンションを断固拒否した。