愛たい夜に抱きしめて





「用事は済みましたか?」

「はい。待たせてしまいすみません」

「いえ、気にしないでください」



なんだかとても、よそよそしい会話。


……まあ、まだ会うのは今日で2回目だし、いろいろと急だったから当たり前だと言えば当たり前なのだけど。


私よりも、敬語をとってくれと要求してきた紫昏くんのほうがよそよそしくて、なんだか調子がくるってしまう。




「乃坂さん、敬語は本当にとってもらっていいんですよ?」

「……あ、えと、その、実は昔の名残というか、ついつい以前の癖で初対面の人とか、私が敬語を使わなきゃと思った人にはどうにも抜けなくて……。ごめんなさい、すぐに崩せるようにするね」




なかなか、昔に馴染んでしまった癖は抜けなくて。

ほんと、困ったものだと思う。