ニコリと胡散臭そうな笑顔を浮かべられ、その姿に若干引き気味になりつつもスマホを取り出す。
探し当てた大家さんの番号をタップし、コール音を聞きながら、頭が痛くなっていくのを感じた。
今までいろいろ面倒を見てもらっていた大家さんだから、話が本当なら、アパートから出ていかなければならない。
そんなことを考えていれば、ぷつりとコール音が途絶えた。
「……もしもし、北見さん、いますこしいいですか?」
『澄良ちゃん?……あ、もしかして、もう檪さんから伺った?』
「あ、えと、アパート取り壊しの件、ですよね?」
『そうなの』
電話の向こうで、大家さんの穏やかな声の他に、ざわざわと複数人の声が聞こえる。
「えっと……本当、なんですね?」
『うん。ごめんね。あたしから言えればよかったんだけど……実は、いま姉の法事のためにそっちを離れていて』
「そういう理由ならしかたないですよ。そちらでゆっくりされてください」



