愛たい夜に抱きしめて





「実は、乃坂さんがお住みのアパートが、老朽化とあの地域一帯の再開発に伴い取り壊されることになりまして。なにぶん急に決まったものですから、大家さんが現在唯一の住人であるあなたのお住まいに関して僕に相談して来たんです」




詳しく言うと両親なのですが、なんていう補足は、耳に入ってこなかった。


……いや、あれ。言い間違えて、ない??

私の帰る家がなくなったっていう部分では意味は一緒なのでは??



「……あの、じゃあ、このカギは、」

「こちらで一時的な乃坂さんの新居をご用意させていただきました。もちろん家賃はお住みになっていた時のご料金で据え置きさせてもらっています」

「は、はあ、」



いきなりの情報過多で頭が追いついていかない。

理解はできるんだけど、どうするべきかわからない、というか。




「あ、あの、とりあえず、大家さんに確認をとってもいいですか?」

「もちろん。こんな突飛な話をされれば、誰でも本当かどうか確認したいですし」